
富士山では、登山中に亡くなる人が男性に偏っているという、少し気になる傾向があります。
近年のデータを見ると、複数年にわたって遭難死した人がすべて男性だったケースもあり、中高年の男性が多いことも特徴のひとつです。
もちろん、男性だから危険という単純な話ではありません。では、なぜこのような偏りが見られるのでしょうか。
女性も高山病や心停止になる
富士山の救護所では、男女を問わず体調を崩して助けを求める登山者がいます。
若い女性でも、高山病が重症化して心停止に至るケースはあります。幸い、近くにAEDがあり、迅速な対応によって心拍が再開し、その後回復した例もあります。
つまり、富士山での高山病や急激な体調悪化は、年齢や性別に関係なく起こる可能性があります。
中高年男性は持病にも注意
男性に死亡例が多い理由として考えられるのが、持病や生活習慣の影響です。
たとえば、慢性的な呼吸器の病気がある場合、標高の高い場所で酸素が不足すると、体への負担が大きくなる可能性があります。
心臓などに持病がある場合も同様です。
特に中高年になると、「昔はこれくらい平気だった」という感覚だけで登ってしまうのは危険です。
「せっかく来たから」と無理をしてしまう
富士山で体調を崩す人には、登山前の準備が十分でないケースもあります。
遠方から飛行機やバスを乗り継いで到着し、五合目で少し休んだだけで登り始める。さらに、前日の睡眠がほとんど取れていないまま登山を続ける。
こうした状態では、体が標高の変化についていけないことがあります。
そして厄介なのが、「せっかくここまで来たのだから」という気持ちです。
体調が悪くなっても、少し休めばまた登り始めてしまう人もいます。
「休む」だけでなく「下山する」判断も大切
登山では、頑張ることが必ずしも正解ではありません。
頭痛や吐き気、強い疲労感、息苦しさなど、いつもと違う症状が出たら、無理に先へ進まないことが大切です。
「もう少しで頂上だから」と頑張ってしまう気持ちは分かりますが、山では体調が急激に悪化することもあります。
場合によっては、休憩ではなく下山するという判断が必要になります。
富士登山は「無理をしない」がいちばん
富士山は日本を代表する山ですが、標高は3,000メートルを超えます。
観光やレジャーの延長のような感覚で登るのではなく、高所での活動だという意識を持つことが大切です。
十分な睡眠を取る、急いで登らない、体調を整えてから出発する。そして、少しでも異変を感じたら無理をしない。
「登頂すること」だけを目標にせず、「安全に帰ってくること」まで含めて登山と考えたいですね。
富士山に限らず、山では「頑張る勇気」よりも「引き返す勇気」が命を守ってくれることがあります。