「がん」と聞くと、多くの人は肺がんや胃がんなど、特定の臓器で発生するものを思い浮かべるでしょう。しかし、中には「どこで発生したのかわからないがん」も存在します。それが「原発不明がん(CUP: Cancer of Unknown Primary)」です。
原発不明がんとは?
通常、がんは最初に発生した場所(原発巣)が特定できますが、原発不明がんは転移したがん細胞が見つかるものの、最初にどこで発生したのかがわからない状態です。診断時にはすでに体の複数の部位に転移していることが多いため、治療が難しいケースもあります。
なぜ原発不明になるの?
原因は完全には解明されていませんが、考えられる要因には以下のようなものがあります。
- 原発巣が自然に消失:免疫システムが働き、最初のがん細胞を消してしまうことがある。
- がんの成長速度の違い:転移したがんのほうが急激に増殖し、原発巣よりも目立ってしまう。
- 診断技術の限界:現代の医療技術でも、すべてのがんの原発巣を特定できるわけではない。
どんな症状が出る?
原発不明がんの症状は、転移した部位によって異なります。例えば、
- リンパ節が腫れる
- 体重減少
- 慢性的な痛み
- 呼吸が苦しくなる
といった症状が現れることがあります。「なんとなく体調が悪い」と感じる程度の場合もあり、発見が遅れることも少なくありません。
診断と治療方法
原発不明がんの診断には、血液検査、画像診断(CT・MRI・PET検査)、組織検査などが用いられます。しかし、原発巣が特定できない場合は、一般的ながん治療とは異なるアプローチが必要になります。
治療の選択肢としては、
- 化学療法(抗がん剤)
- 放射線治療
- 免疫療法
- 分子標的治療(がん細胞の特性に合わせた治療)
などが検討されます。最近では、遺伝子解析によってがんのタイプを特定し、より効果的な治療を選ぶことも可能になってきました。
原発不明がんは、発生源が特定できないため、診断や治療が難しいがんの一つです。しかし、近年の医療技術の進歩により、より精度の高い診断や治療法が開発されています。体調の変化に敏感になり、早めの検査を受けることが大切です。