米国のベンチャー企業が、太陽光を人工的に遮り地球を冷やすことを目指したプロジェクトで投資を募っています。この企業は「カーボンクレジット」に似た「冷却クレジット」を販売し、温室効果ガス削減の代替手段として提案しています。最近、日本に住む複数の人々もこのクレジットを購入していることが分かりました。
しかし、この手法は科学的に確立されていないため、環境や気候への副作用が懸念されています。国際的な規制もなく、こうした実験的な取り組みに対して批判の声が高まっています。
このベンチャー企業は2023年に設立され、気球を使って成層圏に二酸化硫黄(SO2)を散布し、人工雲を作ることで太陽光を遮る技術を試しています。過去の火山噴火が地球を冷やす現象に着想を得ているといいますが、これまで100回以上の打ち上げで約73キロのSO2を散布したと報告されています。
企業側は、これによって温室効果ガスの排出を一定量相殺できたと主張していますが、実際には地球全体の排出量から見ると微々たるものです。一方で、この企業が販売する「冷却クレジット」は10ドルで1トンのCO2相当を相殺する内容。日本からも16人が購入し、定期的に購入する人もいるそうです。
科学界では、この行為が環境汚染や予期しない気候変動を引き起こす可能性があるとされ、批判の目が向けられています。例えば、メキシコ政府は2022年の試験的散布に反発し、国内での大規模な実施を禁止しました。
それでも、企業は事業を継続しています。ある研究者は「技術自体はシンプルだが、規制が必要だったのではないか」と警鐘を鳴らしています。