私たちの暮らしに密接に関わる「地球温暖化」、その原因やメカニズムはどのように解明されてきたのでしょうか?2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士は、まさにこの謎を追い求めてきた科学者の一人です。彼の受賞は、「気候システム」という複雑な分野への貢献が認められた初の快挙でもありました。
本書では、真鍋博士の長年にわたる研究がわかりやすく紹介されています。気候システムの解明は、彼が18層に区分した大気モデルを使って、放射や対流の計算から始まったといいます。その後、雲や氷の面積変化、地上と海洋の温度差や、緯度・経度ごとの変動、さらに海洋の熱の流れまで、地球全体をシミュレーションする壮大な研究へと広がっていきました。
この詳細なシミュレーションによって、CO2濃度が変わると地球環境にどのような影響があるのかを高い精度で予測できるようになったのです。カラー図を交えた解説により、私たちにもその結果が直感的に理解できる構成になっています。地球温暖化についての知識を深め、私たちがこの問題とどう向き合うべきか考えるきっかけになる一冊です。
また、この書籍は真鍋博士がプリンストン大学で行った講義をもとにまとめられており、監訳を担当した増田耕一博士や阿部彩子博士も真鍋博士の教え子です。地球温暖化の未来に挑む科学者たちの知的探求を、ぜひ感じ取ってみてください。