聴覚障害を抱えている人々の中には、「困りごと」に直面していることが少なくありません。でも、その「困りごと」をただ解決するだけではなく、それをきっかけに自分や他者とのつながりを見つけるのが、当事者研究という新しいアプローチです。
この本では、聴覚障害を持つ人々が、自分の「感覚」や「身体」から出発し、他者や社会との「対話」や「情報交換」を通じて、最終的には「物語」を紡ぐプロセスを紹介しています。まさに、自分が抱えている困難をただ隠すのではなく、対話を通じて共有し、より深い理解や新しい視点を得るための取り組みです。
例えば、ある聴覚障害を持つ仲間が「自分の経験は、一般的な聴覚障害の話では語りきれない」と感じたとき、その人は当事者研究の魅力に気づきました。この「わからない」を他の人と「わかちあう」ことで、より豊かなコミュニケーションが生まれるのです。
本書は、当事者研究の歴史や目的を解説し、聴覚障害に焦点を当てた具体的な実践事例を紹介しています。さらに、実際にどのように取り組んでいくか、その方法やヒントも詰まっていて、読者が自分自身の経験を研究に生かすための道しるべとなっています。
最後には、著者たちによる対談も収録されていて、当事者研究への深い洞察を得られること間違いなしです。まだ見ぬ「言葉」を探し、弱さをそのまま受け入れながら、他者とつながっていく新しい「知」を見つける旅に出てみませんか？
