重い腎臓病を抱えた胎児に対して、ブタの腎臓を一時的に移植する臨床研究が進められようとしています。東京の医療チームがこの研究を計画しており、学内の委員会に近く審査を申請する予定です。もしスムーズに進めば、年度内にも国に移植計画を申請する可能性があるそうです。
対象となるのは、「ポッター症候群」という腎臓の発育が不十分な胎児で、この病気では尿が作れず、命に関わることが多いのです。現時点では胎児期に効果的な治療法がないため、死産や出産直後の死亡が多いという現状です。
移植手術は出産予定日の約4週間前に行われます。手術方法は、特殊な針を使い、胎児の背中に小さなブタの腎臓(約2ミリメートル)を注入するというもの。手術後、赤ちゃんが成長して透析治療を受けられるようになると、ブタの腎臓は摘出されます。
この「異種移植」は、動物の臓器を使う国内初の試みとなり、さらに胎児への移植という点でも非常に慎重な対応が求められています。医療チームは患者団体や外部の専門家を交えた特別委員会を設置し、審査を進める予定です。また、専門家以外の市民の意見を取り入れるために、シンポジウムも開催する予定です。
今回の研究を進める教授は、「早ければ2026年にも最初の手術を行えるよう準備を進めたい」と語っています。世界的には、臓器移植の不足を補う手段として異種移植が注目されており、アメリカや中国ではすでにブタの心臓や腎臓を使った移植手術が行われています。国内でも、今後の実施に向けて厚生労働省の専門家部会が指針の改定を進めています。